タクシー代わりに使える救急車と神のエアラインと偽善者たち

タクシー代わりに使える救急車と神のエアラインと偽善者たち

百田尚樹の「偽善者たちへ」という本が出たが、よく売れているそうだ。

世間では皆「良い人」でありたいと思う。

確かに良い人は多いのだが、表面的な「良い人」を演じている役者も多い。

今回は僕がアメリカで経験した、良い人(本物)と良い人(偽善者)について書いてみる。

目次

  • 救急車をタクシー代わりに使う国
  • 1500万円の請求書が届く
  • 日本人はみな優しい
  • 神のエアライン

救急車をタクシー代わりに使う国

今年の夏に日本で初めて救急車を呼んだ。

嫁が熱中症になり、家の中で突然体調不良を訴えたからだ。

僕はアメリカで救急車を呼んで恐ろしい請求が来た経験がトラウマになり、日本でも救急車を呼ぶことにいまだに抵抗がある。

多くの日本人は救急車はタダだと思っている人は多い。

アメリカには国民健康保険がないので、救急車を呼ぶだけで軽く1,000ドル(10万円)は取られる。

緊急事態で生命にかかわるというのに、こんなに金を取るなんて信じられないと思うかもしれないが、世界的にみると日本は特別だ。

日本でも救急車を呼ぶ費用は5万円位は掛かっているのだか、これらはすべて税金でまかなわれている。

ちょっとしたことで救急車呼んだり、救急車をタクシー代わりに使う人がいるという国の方がおかしいのだが。

さてアメリカの医療費は恐ろしく高いというのは誰もが知るところ。

日本ならちょっと風邪をひくと、病院で注射を打ってもらったり、薬をもらいにいく。

しかしアメリカならこの程度でも4~5万くらいは軽く請求される。

だから少しくらいの体調不良なら、多くの人は普通は我慢する。

まして、アメリカで出産などしようものならもの凄い請求書に驚くことになる。

ざっとこの様な内訳だ。

●担当の医者からの請求、40万円

●個室3日間使用料 30万円

●手術後に1時間ほどいただけのリカバリールーム使用料、10万円

●手術室代は 30万円

●産まれた子供の世話費用、20万円

●麻酔代、15万円

総額150万円なり。

その他ティッシュ・ペーパー2000円、脱脂綿2000円なんてのもある。

細かいことが嫌いなアメリカ人もこんなところだけは異常に細かい。

1500万円の請求書が届く

専業トレーダーになる前、仕事でアメリカへ出張した時の出来事は今でも忘れない。

同行していた僕の部下が、ホテルの部屋でいきなり喘息の発作に見舞われたことがあった。

ヒーヒーと言いながら呼吸困難に陥った彼を見て、慌てて救急車を呼び病院へ。

ICU(集中治療室)で1ヶ月近く生死をさまよった彼は奇跡的に生還するのだが、その後病院から来た請求書を見てたまげた。

トータルでその額なんと1,500万円!

1日入院するだけで10万円も請求される国である。

あなたが海外旅行する際には、くれぐれも医療保険だけはちゃんと入っておくことをお勧めする。

日本人はみな優しい

日本人はみな優しい・・・

日本を訪れたガイジンは口を揃えて言う。

確かに日本人は親切だが、本質の優しさという意味では、少し違うような気がする。

アメリカ出張で発作に見舞われ、ICUで2週間生死をさまよった末に、ようやく意識を取り戻すことができた部下の後日談がある。

アメリカの病院というのは、1日入院するだけで恐ろしい金額を請求される。

アメリカの病院で生死をさまよっている間、日本から彼のご家族が来た。

本人の容態はもちろん、アメリカの医療事情などの説明を一通りした後、ご家族から何とも言えない絶望感が漂ってきた。

一番の問題は膨大な入院費用である。

入院した彼はもともと喘息持ちだったので、今回の入院費用は一切保険の適用外ということが判明した。

経済的負担から、1日も早く退院して帰国を望む家族。

意識を回復したとはいえ、今の状態では日本までの長時間のフライトには危険が伴うという。

医師は飛行機に酸素ボンベを持ち込んで、酸素吸入しながら搭乗することを帰国の条件とした。

彼は一命は取り留めたが、まだ発作が起こる危険性がある状態。

ロスアンゼルスから日本までのフライトは約12時間。

その為には、飛行機の中に12時間分の酸素ボンベを持ち込まなければならない。

しかも通常に座る姿勢を保つことができないので、隣席を確保して体を横たえるスペースも必要なのだ。

外国でのこんなトラブル時には、何といっても日本の企業が頼りになる。

早速、日本のエアラインに医師からの移送許可書を見せ、いかに緊急を要するかを説明し要請したのだが、JALもANAも酸素ボンベの機内への持込を断った。

高い高度を飛行して機内に高圧ガスを持ち込む危険性、セキュリティー上の問題、前例が無いなど、言葉は丁寧だが、まるで取り付く島も無い。

思わず聞く耳を疑った。

同じ日本人が外国で生死にかかわる事態に陥っているのに、この人たちはまるで他人事で、関わることさえ避けようとしているのが見え見えの対応だっだ。

その時に見たのはあまりにも冷たい日本人の対応だった。

「あー、日本人ってこんなんだったのか」と思った。

その後、半ば絶望的な気持ちでアメリカのエアラインである「デルタ」のカウンターへ行った。

デルタのカウンターで事情を説明すると、「わかった、すぐにボスに相談する」と電話を取り、数分のやり取りのあと、「事情はよくわかった。今回特例で対応する」との返答。

再び聞く耳を疑った。

神のエアライン

更に酸素ボンベの持ち込みだけでなく、エコノミー席の前後3列を空けて、酸素ボンベの設置や、彼が横になれるスペースの確保をしてくれたのである。

通常、緊急時にこういった体制を取るには、恐ろしい設置費用が航空運賃とは別に請求されると言われている。

しかしこのときデルタ航空のカウンターの職員から信じ難い言葉を聞いた。

「遠いアメリカに来て大変な目に会われてとても気の毒に思う。日本までは我々がしっかりサポートしてお送りするので、どうかご安心を」

更に「今回は人道的支援ということで、費用は一切請求しない」

マジか?

まさに神のエアラインである。

そこには「ニホンジン」も「ガイジン」もない、「ニンゲン」としての対応である。

表面的にはどの国よりも優しい日本人だが、いざという時の日本人の冷たさを、アメリカでの経験から思い出した。

日本人の乗客なのに日本のエアラインは搭乗を拒否し、アメリカのエアラインが人道的支援から快く受け入れてくれたのである。

日本のサービスやおもてなしは間違いなく世界一だと信じていた僕。

もちろんエアラインでもアメリカの素っ気無いサービスに比べて日本のエアラインは好評だ。

しかしこれを期に僕の価値観は全く変わってしまった。

平時はいろいろと細かい気遣い、サービス満点の日本のエアライン。

しかし今回のピンチを救ってくれたのは、細かい気遣いと暖かいおもてなしをしてくれる日本のエアラインではく、日頃サービスが悪いと悪名高いアメリカのデルタ航空だったのである。

今でもその時の親切は忘れることが無い。

機内への酸素ボンベの持込の危険を理由に搭乗拒否した日本のエアラインと、リスクを承知で助けてくれたデルタ航空。

複雑な気持ちになったのは僕だけだろうか...

百田尚樹、偽善者たちへ

この記事を書いたのは私です