「リーマンさん」と呼ばれる上司

Last Updated on 2025年10月13日 by ぷーやん

猛烈な勢いで突き進むマーケットの喧騒。

誰もが「いけいけドンドン!」と浮かれ騒ぐこの相場の熱狂ぶりを、我々は目を細めて眺めるほかない。なぜなら、我々こそ、あの悪夢のような「リーマンショック」の痛みを、骨の髄まで知っている世代だからだ。

この病的なまでのバブルが、一体いつ、どんな音を立てて崩壊するのか。その恐怖が、毎日のように胸の奥底でヒヤヒヤとした震えとなり、相場を眺める視線に張り付いている。

まさに今、市場を席巻している若い世代、つまり20代や30代の連中にとって、あのリーマンショックの出来事は、ほとんど神話か伝説のようなものだろう。我々にとってトラウマとなっている金融危機も、彼らにとっては遠い宇宙の出来事。

彼らは当時の痛みを覚えている上司を、半ば冷やかし半分に「リーマンさん」などと呼んでいるらしい。

「またリーマンさんが何かヤバイヤバイって言ってるよ」などと、軽々しく口にして馬鹿にしているのだろう。この認識の差こそが、今の相場の危うさを象徴していると言える。

2008年当時、新卒でマーケットの世界、証券会社などに足を踏み入れたとしても、今はもう40歳前後。

ということは、40代未満の層のほとんどが、あの地獄のようなリーマンショックという「トラウマ」を、身をもって体験したことがないのだ。

彼らにとってリーマンショックなど、もう絵空事のようなものなのだろう。

2012年から、アベノミクスという巨大な金融緩和の波に乗って、日本の株価は約6倍という驚異的な上昇を遂げた。

要するに、彼ら20代・30代が相場に入ってから見てきたのは、ひたすら「右肩上がり」の景色だけ。相場の持つ真の「地獄」を経験したことがない。

彼らのメンタルに深く染み付いているのは、「相場はいつまでもバブルが続く」という、根拠のない楽観論だろう。バブルが弾けるなどという恐ろしい事態は、微塵も、1ミリも、彼らの思考の片隅にすら存在しないのだろう。

しかし、この現在のAIを巡る狂騒曲、いわゆる「AIバブル」は、誰がどう見ても、異様な熱を帯びている。

市場が何よりも大好きなのは、とにかく「イノベーション」という言葉。

とにかくAIの革新、とにかく今までになかった技術、とにかく「イノベーション」という名前さえ叫んでいれば、株価は青天井で上がると信じられている。

だが、我々は過去にも似たような熱狂を見てきた。

かつて「メタバース」なる仮想都市が、人類の生活を根底から変える大きなイノベーションになると喧伝され、大騒ぎになった時期があった。しかし、そのブームは今や完全に消え去り、ほとんど話題に上ることもない。

結局のところ、相場の歴史は繰り返される。

誰かが、力強く、大きな声で「これは本物のイノベーションだ!」と叫び始めれば、皆が「この波に乗り遅れてはならない」と必死になってその熱狂に追随する。

そして、最後は皆が手を携えて、そのバブルと共に海の底へと沈んでいく。この悲劇的なパターンが、昔から連綿と続いている、変わらぬ相場の宿命なのだ。我々は今、その宿命の真っ只中にいるのかもしれない。

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