Last Updated on 2026年7月31日 by ぷーやん

昨今の日本や韓国におけるメモリ相場の崩壊は、投資界隈に凄まじい衝撃を与えた。
信用取引を利用していた投資家たちは次々と「追証」の嵐に飲み込まれ、破滅を先延ばしにするための「禁断のナンピン」に手を染めた結果、再起不能なまでに叩き潰された。
こうした光景は、歴史上何度も繰り返されてきたものである。
投資家たちは口々に「今回の暴落は特別だ」「昔のケースは参考にならない」と言うが、それは相場における最大の嘘だ。相場の悲劇の本質は、数百年経っても一歩も進歩していない。
その最も残酷な例が、18世紀に起きた「南海泡沫事件(サウス・シー・バブル)」であり、その最大の被害者が近代物理学の父、アイザック・ニュートンであった。
宇宙の真理を数式で解き明かした天才ですら、隣人が株で儲けているという「壮大な嫉妬」には勝てなかったのだ。
18世紀の「ミーム株」:南海会社の正体
ニュートンが投資したのは、現代で言えば「18世紀版のミーム株」とも呼べる南海会社の株式だった。
当時のイギリス政府は多額の債務を抱えており、南海会社はその債務を引き受ける代わりに、南米との貿易独占権を得るという画期的なビジネスモデルを掲げていた。
しかし、現実は甘くない。南米の制海権を握るスペインが、イギリスの自由な貿易を許すはずもなかった。
実際、この会社による貿易利益はほぼゼロであり、その企業価値は実体のない「素晴らしいストーリー」という名のハイプ(誇大広告)によってのみ支えられていたのである。
天才をも狂わせる「FOMO(取り残される恐怖)」の正体
ニュートンの投資行動を時系列で追うと、人間の理性が感情によっていかに簡単に破壊されるかが浮き彫りになる。
- 第一フェーズ(理性の勝利): 1720年初頭、ニュートンは早い段階で南海株を購入。4月には株価の上昇を受けて売却し、7,000ポンド(現在の価値で数億円相当)の利益を確定させた。ここまでは完璧な勝利だった。
- 第二フェーズ(嫉妬の芽生え): ニュートンが売却した後も、株価はさらに暴騰を続けた。500ポンド、700ポンド、そして800ポンドを超えていく。彼は、自分よりもはるかに愚かな知人たちが、株を持ち続けているだけで「馬鹿げたほど金持ちになっていく」光景を黙って見ていることができなかった。
- 第三フェーズ(破滅への再参入): 「取り残される恐怖(FOMO)」と、隣人への嫉妬に耐えかねたニュートンは、株価の絶頂期に再参入してしまう。それも、以前得た利益を投じるだけでなく、全財産を注ぎ込むという暴挙に出たのだ。
結果は歴史が語る通りだ。
バブルは瞬時に崩壊し、ニュートンは2万ポンド(現在の価値で数百万ドル、数十億円相当)という天文学的な資産を失った。数十年にわたる公職での蓄えが、一瞬で蒸発したのである。
「バカ理論(Greater Fool Theory)」という椅子取りゲーム
ニュートンの悲劇の背景には、投資の心理学における「バカ理論」が存在する。
これは、資産の適正価値がいくらであるかは重要ではなく、「自分よりも高い価格で買ってくれる、もっと大きなバカ」が明日現れると信じている間だけ価格が上がり続けるという、極めてシニカルなゲームだ。
- 価格が現実のファンダメンタルズから完全に乖離する。
- 誰もが「次のバカ」に高値で売り抜けることだけを考え、群れに加わる。
- 最終的に「新しいバカ」がいなくなった瞬間、音楽は止まり、価格は垂直落下する。
ニュートンは天体の動きを計算することはできたが、この「音楽が止まるタイミング」だけは計算できなかった。
「天体の動きは計算できるが、人々の狂気は計算できない」という彼の有名な言葉は、市場という名の「人間心理の濁流」の前では、最高レベルの知性すら無力であることを証明している。
歴史は繰り返す:現代の投資家への教訓
300年前の南海泡沫事件から、1600年代のチューリップ狂時代、1990年代後半のドットコムバブル、そして現代のハイテク株や暗号資産に至るまで、その構造は全く変わっていない。 テクノロジーや金融商品は進化したが、人間の脳に刻まれた**「強欲」「嫉妬」「FOMO」**という本能はアップデートされていないからだ。
投資における最大の敵は、複雑な市場アルゴリズムでも、狡猾な大口投資家でもない。自分自身の感情、特に「隣人が儲けている」という事実に対する我慢ならない嫉妬心である。
次のバブルが訪れたとき、あるいは相場が急落したとき、あなたはニュートンのような「狂気の椅子取りゲーム」に巻き込まれずに済むだろうか。
それとも、やはり歴史の教訓を無視し、再び同じ悲劇の主役を演じるのだろうか。
私たちは、自分たちの知性が「嫉妬」という名の感情によっていとも簡単に上書きされることを、肝に銘じておく必要がある。
この記事の監修者:ぷーやん(35年の実績)
今日もお越し下さりありがとうございます
応援よろしくお願いします!
先物・オプションランキング メルマガ詳細
