スイスフラン・ショック:投資の不確実性を凝縮した教訓

Last Updated on 2025年9月30日 by ぷーやん

2015年1月15日のスイスフラン・ショックは、世界の金融史に残る大事件だった。

スイス国立銀行(SNB)が突然、ユーロに対する最低交換レート(1ユーロ=1.20スイスフラン)を撤廃した出来事だ。

この背景と教訓は、今も投資家にとって極めて魅力的で重要なテーマとなっている。

無制限介入の「限界」と「安全通貨」の罠

事件が起こるまで、スイスフランは世界的な安全資産の代表格だった。

特にユーロ圏がギリシャ危機などの債務問題を抱える中、世界中の資金がスイスフランに殺到していた。

この過度な需要によるフラン高を食い止め、スイスの輸出産業を守るため、SNBは2011年9月から「無制限の介入」を宣言し、1.20フランを死守していた。

投資家にとっての魅力的な視点

  • 抑制されたリスクの爆発力: 最低レートの存在は、スイスフランの価値の「天井」と「床」を人為的に作り出していた。多くの投資家は、SNBがレートを維持すると信じ、安心して低金利のスイスフランを借りて他通貨に投資する「キャリートレード」を行っていた。これは、ある意味でリスクが隠蔽された状態だった。
  • 中央銀行の「無限」の限界: SNBは最低レートを維持するため、大量に自国通貨(フラン)を刷ってユーロを買い続けた結果、その外貨準備高は国内総生産(GDP)に迫る規模にまで膨れ上がっていた。無制限介入と言えど、中央銀行のバランスシート拡大には市場の信任という「限界」があることを示唆していた。

衝撃の結末:一夜にして変わったルール

SNBが固定相場制の放棄に踏み切った最大の要因は、欧州中央銀行(ECB)による大規模な量的緩和(QE)の実施が目前に迫っていたことだ。

ECBがQEに踏み切れば、ユーロが大幅に下落し、SNBが1.20の防衛のために必要な介入規模が、文字通り天文学的な水準になることが予想された。

SNBは市場の予想を裏切り、突然の撤廃を決断した。

投資家への影響と教訓

市場の「絶対」は存在しない
発表直後、スイスフランは対ユーロで一時30%近くも暴騰した。

これは、過去の固定相場制を信じていたトレーダーや金融機関に壊滅的な打撃を与え、世界中のFXブローカーが巨額の損失を出し、一部は破綻した。

市場で「中央銀行が必ず守る」といった確信的なルールは、一夜にして崩れるという冷酷な現実を突きつけた。

ヘッジコストの再認識: この事件は、流動性の高い先進国通貨であっても、極端なテールリスク(可能性は低いが、発生すれば甚大な被害をもたらすリスク)が存在することを痛感させた。

安全資産とされる通貨でさえ、その価値の変動リスクを軽視してはいけないという教訓を残した。

SNBの「新たな武器」
マイナス金利: 最低レートの撤廃と同時に、SNBは銀行の預金金利を-0.75%に引き下げ、史上初のマイナス金利導入を本格化させた。これは、フラン高を抑制するための新たな通貨政策の武器となった。

不確実性への投資

スイスフラン・ショックは、通貨市場が単なる経済指標だけでなく、中央銀行の意図と決断という極めて政治的かつ不確実な要因に左右されることを証明した。

賢明な投資家は、この教訓から以下の視点を得るべきだ。

  • リスクへの報酬を求める: 固定相場が崩壊したことで、スイスフランは再びその「安全資産」としての真価を取り戻し、有事の際の逃避先として強力な価値を持つことになった。ボラティリティ(変動幅)は大きくなったが、それは同時に大きなリターンの機会も生み出す。
  • 「既定路線」を疑う姿勢: 政策が「永久に続く」という市場のコンセンサスを盲信せず、常に中央銀行が窮地に立たされた場合のシナリオを考えることが、次の大きなチャンス、あるいは致命的な損失を回避する鍵となる。

このショックは、リスクを恐れるのではなく、リスクを理解し、それに備え、利用する投資家こそが生き残れることを教えている。

次のショックはどこから来るだろうか

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