Last Updated on 2025年11月18日 by ぷーやん

日本の時計メーカーであるセイコーの株価が、円建てで5年前から6倍以上に高騰している
これは、一見すると驚くべき成功物語のように映る。
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しかし、株価をスイスフラン(CHF)で割った倍率でみると、その上昇率は70倍から一気に42倍にまで下落し、チャートは右肩下がりの様相を呈する。
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この現象が示唆するのは極めて明確だ。
それは、円の価値が相対的に大きく低下した、つまり急激な円安が進行しているということに他ならない。セイコーの円建て株価の上昇は、企業の純粋な価値向上だけでなく、円の購買力低下によって大きくかさ上げされている側面がある。
円安が映し出す真実:競争力と株価の乖離
セイコーの高級ブランドラインであるグランドセイコー(Grand Seiko)は、世界的な評価を高め、ロレックスなどのスイス高級時計ブランドと真正面から競争する位置につけている。その技術力やデザインは、国際市場で非常に高い競争力を持っていることは間違いない。
しかし、株価への影響を考える上で、この「円安」の背景は無視できない。
セイコー(グランドセイコー)の相対的競争力と株価
- 競争力(製品ベース): グランドセイコーは、その品質とブランド力でロレックスに比肩し得る存在になった。特に、日本の「匠」の技術や独自のスプリングドライブなどの技術的優位性は、高評価を得ている。円安は海外での販売価格を相対的に安価にし、輸出競争力を一時的に高める効果がある。
- 株価への影響(投資ベース): 前述の通り、円建てで見れば株価は大きく上昇しているが、これは「希薄化」した円での評価に過ぎない。国際的な投資家がスイスフランや米ドルなどの基軸通貨でセイコー株を見た場合、そのリターンは大幅に目減りしている。つまり、真の企業価値の伸びが為替の変動によって打ち消されている状態だ。この「右肩下がり」のチャートは、国際的な投資家にとっての魅力が低下していることを示唆する。
ロレックス(スイス高級時計)との比較優位性
ロレックスは非上場企業のため、直接的な株価比較はできないが、ライバルであるスイスのコングロマリット(例えばリシュモンやスウォッチ・グループ)や、高級時計市場全体の動向から相対的な優位性を測ることは可能だ。
- 相対的な株価の優位性: スイスフラン(CHF)は、しばしば安全資産として見なされ、その価値は比較的安定している。ロレックスなどのスイス高級時計メーカーは、国際市場での圧倒的なブランド力と、安定した通貨という二重の強みを持つ。ロレックスの価値を測る指標の一つである中古市場価格は、需要の高さから安定しているか、むしろ上昇傾向にある。
- セイコー株の価値が「円」の変動に左右され目減りしている一方で、ロレックスの競争力は「普遍的な価値」に裏打ちされており、そのブランド力は為替変動の影響を受けにくい、あるいは為替変動を超越する優位性を持っていると言える。
為替が覆い隠す真の優位性
この比較から浮かび上がるのは、為替が企業価値の「見かけ」を大きく歪めているという現実だ。
セイコーは、グランドセイコーを通じて製品としての競争力は高めたものの、その株価の評価(特に国際的な視点でのリターン)は、日本経済全体の低迷と急速な円安というマクロ経済的な背景に足を引っ張られている。
一方、ロレックスに代表されるスイス高級ブランドは、超長期的なブランド構築と通貨の安定性によって、為替変動のリスクを吸収し、相対的な投資優位性を保っている。
真に企業価値が向上し、国際的に魅力的な投資対象となるためには、為替の変動に依存しない「真水」の利益成長と、通貨としての「円」の信任回復が必要不可欠となる。セイコーの円建て株価高騰は、日本の企業努力を評価する前に、円の「弱さ」を反映した警鐘と捉えるべきだろう。
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