Last Updated on 2026年1月18日 by ぷーやん
ゴールドマン・サックス。
金融界の頂点に君臨するこの巨人の「内側」を覗き見ることは、個人投資家にとって至高の知的体験であると同時に、強烈な違和感を突きつける装置でもある。
紹介する動画は、10年以上前に制作された証券部門のプロモーション映像だ。
きらびやかなオフィス、整った環境、そしてカメラに向かって理路整然と語る若きトレーダーたち。
だが、日々相場の泥沼を這いずり、血を流しながら生き残っている実戦家の目には、この映像はどう映るだろうか。
1. 「プロップトレード」という甘美な罠
動画内では、会社の資本をリスクに晒し利益を追求する「プロップ(自己勘定)」業務が、あたかもエリートの知的ゲームであるかのように語られている。しかし、現実はどうだ。
プロップトレードと一口に言うが、そんなに簡単に利益が出るわけがない。
いくらゴールドマン・サックスという看板を背負っていようと、この弱肉強食の極致であるプロップの世界で生き残れる者が、そう何人もいるとは思えない。
巨額の資本力と情報網を持ってしても、市場は牙を剥く。成功の陰には、語られることのない無数の「退場者」の死骸が積み上がっているのが相場の真の姿だ。
2. 修羅場を知らぬ者が語る「トレーディング」の違和感
映像に登場する若い女性トレーダー。
彼女が語る「決断力」や「客観性」といった言葉は、確かに教科書的には正しい。しかし、そこに相場の「業」や、一歩間違えれば破滅という恐怖を潜り抜けてきた凄みは微塵も感じられない。
相場の恐怖も知らない、まだ何の経験も無い若者が、修羅場を経験した形跡もなくトレーディングの極意を語る。
その光景には、拭い去れないナンセンスさが漂う。胃に穴が開くような連敗、全財産を失うかもしれない恐怖、眠れぬ夜。そうした地獄を一切排除した「清潔なトレーディング」を語ること自体、現場を知る者からすれば、どこか滑稽でさえある。
3. 理想と現実の乖離:プロモーションの裏側
「自分自身のアイデアで取ったポジションが、利益が出る時が一番スカッとする」
その笑顔の裏に、どれだけの泥臭い計算と、どれだけの冷酷な「切り捨て」があるのか。
動画で描かれるのは、あくまで「対外的な顔」に過ぎない。我々投資家が本当に学ぶべきは、このキラキラした映像のフレーム外にある、吐き気を催すようなプレッシャーと、それでも立ち向かわなければならない残酷な現実だ。
4. 投資家がこの動画から読み取るべき「皮肉」
この動画を単なる成功者のドキュメンタリーとして受け取ってはならない。
むしろ、世界最高の金融機関であっても、表向きにはこれほどまでに「美化された世界」を提示しなければならないという事実を直視すべきだ。
相場は知的でクールなものではない。もっと卑俗で、醜く、残酷なものだ。
修羅場をくぐり抜けてきた投資家であれば、この映像の清潔さに嘲笑を浮かべつつも、その裏にある「絶対に勝たなければならない」というGSの狂気じみたエリート主義を嗅ぎ取ることができるだろう。
この動画は、相場の真実を語っているのではなく、相場という怪物を「飼い慣らしているフリ」をするエリートたちの記録である。
その滑稽さを笑うか、あるいはその余裕の裏にある組織の厚みを恐れるか。
現状の相場に絶望し、それでも画面に向かい続ける我々にとって、この映像は最高の「反面教師」であり、同時に冷酷なエンターテインメントである。
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