
かつて日本が熱狂に浮かされていたバブル時代。その狂乱の象徴として、今なお語り継がれる一人の女性がいる。
大阪・ミナミの料亭「恵比寿」の女将であり、「バブルの女帝」と呼ばれた尾上縫だ。
彼女が動かした金額は、想像を絶する。
銀行からの借入金総額は、なんと2兆7700億円。個人が動かした額としては日本史上に残る巨額であり、支払った利息だけで1300億円を超えるというから開いた口が塞がらない。
しかし、この物語で最も戦慄を覚えるのは、その金額の多さではない。その巨額の資金が動かされた「根拠」にある。
ガマガエルの前で「株よ、上がれ!」
彼女の料亭の奥には、巨大なガマガエルの石像が鎮座していた。
尾上縫はこの像を前に、「神のお告げ」を聞くための祈祷を行っていた。
「変身、上がれ、ヘイ!」
そんな掛け声とともに、カエルの前で株価の行方を占う。これだけ聞けば、ただの風変わりな信仰に見えるかもしれない。
異常なのはここからだ。
この、およそ科学的とは言い難い、滑稽ですらある儀式の周りを、日本を代表するエリート銀行員たちが真剣な面持ちで取り囲んでいたのだ。
東大卒のエリートが集まる日本興業銀行をはじめ、名だたる都市銀行の社員たちが、彼女の「カエルのお告げ」を一喜一憂しながら見守り、競うようにして巨額の融資を申し出た。
中には、銀行の頭取が直々に挨拶に訪れることさえあったという。
人間、お金が絡むとここまで判断が狂うのか
冷静に考えれば、金融知識も乏しい一介の女将に、これほどの巨額融資を行うなど正気の沙汰ではない。
しかし、当時の日本は「何を買っても上がる」という狂乱の時代。偶然の的中が神格化され、プロであるはずの銀行員たちの目も、札束の山によって曇らされてしまった。
まさに「集団催眠」とも言えるこの光景は、お金という魔物が人間の知性やプライドをいかに容易く破壊するかを物語っている。
エリートたちが頭を垂れてカエルに祈る姿は、当時の日本の歪んだ豊かさを象徴する、最高に皮肉で不気味な縮図であった。
バブルの終焉と、残されたカエル
1990年、バブルが崩壊すると、魔法は解けた。
株価の暴落とともに彼女の資産は消え去り、預金証書の偽造という犯罪に手を染めて逮捕。2兆円という砂上の楼閣は、あまりにもあっけなく崩れ去った。
彼女が最期まで大切に語っていたのは、あのガマガエルのことだったという。
「カエルは自分たちを助けてくれる神さんや」
現在、かつて彼女が拠点としたビルには大量の札束が積まれていた金庫室の跡だけが残り、高野山にあったあのカエルの石像も今は処分されている。
人間は、欲望を目の前にした時、どこまで「馬鹿」になれるのか。
この動画が映し出すのは、単なる過去の事件ではなく、今も私たちの心の奥底に潜む「お金への盲目的な狂気」そのものだ。
【借入金は2兆7700億円】銀行が生んだバブルの女帝・尾上縫 「株よ上がれ!」狂気の儀式と銀行の罪
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